パルメニデスという哲学者は、2500年も前に古代ギリシャで活躍した人です。
彼が生まれたのは、紀元前515年ごろ、南イタリアのエレアという小さな町。裕福な家に生まれたパルメニデスは、ピュタゴラス派という当時の有名な哲学グループで学び、その後、自分独自の考え方を持ち始めました。
このパルメニデスの考え方は、彼の生まれた町の名前にちなんで「エレア学派」と呼ばれました。エレア学派の思想は、とても独特で、当時の人々に強い影響を与えました。
・エレア学派を創始
パルメニデスの「存在と非存在」
パルメニデスの大きな疑問は「存在とは何か?」というものでした。彼の考え方は「存在しているものは確かに存在しているけれど、存在していないものは何も存在しない」というものです。
言葉にすると難しく聞こえますが、要するに「存在しないものについて考えたり話したりすることは意味がない」ということです。例えば、「何もない空っぽの箱がある」という話をするのも矛盾しています。なぜなら「何もない」ことについて考えるなら、それが「ある」ことになってしまうからです。
・空っぽの箱は矛盾
パルメニデスの「存在は変わらない」という主張の意味
さらに、パルメニデスは「存在するもの」というのは「不変」であると主張しました。不変というのは、変わらない、なくならない、という意味です。
彼の考えでは、「存在するもの」はひとつで、それが他のものに変わったり、動いたりすることはありません。もし何かが変わったり、動いたりしたら、それはその時点で「存在しないもの」が「存在するもの」になってしまいます。
このように、「存在するもの」はいつでも同じ形で、ずっと変わらないままです。これも少し難しいですが、パルメニデスは「存在は絶対に変わらないもの」としてとらえていたのです。
・変化は存在しない
パルメニデスは感覚に頼らない?
パルメニデスの考え方は、感覚に頼るのではなく、理性や論理的な思考を重視するというものでした。普段、私たちは目に見えたり、耳で聞いたりして「こうなっている」と感じますよね?
しかし、パルメニデスは「そういった感覚は信頼できないことが多い」と考えました。なぜなら、感覚に頼ると人によって意見がバラバラになり、争いが起こることもあります。そこで、彼は理性を使って冷静に考えることが大切だと考えたのです。
・理性で真理を追求
神秘的な体験から得た真理
パルメニデスの主張には、興味深いエピソードがあります。彼は、自分の考えがただの思いつきではなく、神秘的な体験から得た真理だと信じていました。
彼の作品『自然について』の中で、彼が女神と出会い、その女神から「真実」を教わる場面が登場します。パルメニデスは、自分の主張を「女神から教わった真理」として語ることで、「自分は深い真実に到達した」という自信を強く表したかったのかもしれません。
・真理は神秘的体験
存在はひとつで変わらない
パルメニデスは「存在」という概念をとても大事にしていましたが、「変わる」「動く」など私たちが普段当たり前だと思っていることを否定しました。
たとえば、「何かが生まれる」というのは「何もない状態」から「何かができる」ということですが、パルメニデスは「何もない」ことを認めませんでした。もし何もない状態があるなら、それは「存在しない」ことになり、存在しないものが存在するのは矛盾だからです。
また、もし存在するものが二つ以上あったら、それぞれの間に「すきま」があるはずです。でも、その「すきま」は「存在しないもの」なので、これもまた矛盾が生じます。こうしてパルメニデスは、存在はひとつで変わることのないものだと主張しました。
・変化は矛盾を生む
パルメニデスの哲学理論とその現代的解釈
パルメニデスの考えは、現実と大きく違って見えるかもしれません。私たちは毎日、何かが生まれたり、消えたり、変わったりするのを目にします。
しかし、彼は「人間の感覚には間違いや勘違いがあるかもしれない」とし、理性だけで考えることの大切さを強調しました。彼は、そうした理性による思考を通して、皆が納得できる答えを見つけられるはずだと信じたのです。
パルメニデスの哲学が今も重要な理由
このように、パルメニデスの哲学は「世界がどうなっているか」よりも「どうやって真実を考えるべきか」に重点を置いています。
彼の考え方は、現在もなお哲学の中で重要なテーマとされており、「存在と非存在」「変わらないものとは何か」という問いは、今も多くの人々の研究の対象になっています。